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天国と地獄 (1963)

監督
黒澤明
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4.37 / 評価:283件

「春は花粉症でねむれない」

  • shi***** さん
  • 2017年3月21日 7時48分
  • 閲覧数 85
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

営利目的の子供の誘拐に対して、その行為がいかに卑劣であり、しかも当時の法的な量刑(1年以上10年以下の懲役)の軽さに私憤を感じた黒澤明監督の63年度公開作品。


リバイバル上映で初めて観たときは、え、これでおわり?みたいな終わり方に何か物足りなさを感じましたが、頭の悪い自分でも何回か見返すうちに本作のよさが段々と理解できてまいりました(初見の時だったら、星3つぐらいだったかも)。


問答無用に面白い「七人の侍」や「用心棒」のような娯楽性が強く、勧善懲悪で清涼感のある映画でもないし、「生きる」や「赤ひげ」のような人情劇というか、ヒューマニズムに訴える、つまり泣ける映画でもなく、かなり、人間の悪意が前面に出て来る映画なので、観ていてウキウキしたり、ジ~ンとなったりはしませんが、丁寧なつくりで起承転結がハッキリとしていて、見事な群像劇にもなっています(気づくのが遅かった・笑)。犯人を追い詰めてゆくプロセスには、日本警察の捜査法の優秀性も感じられます(仲代達也が切れ者の戸倉警部を好演)。


「冬は寒くてねむれない、夏は暑くてねむれない」、 そんなボロアパートから見上げる高台の白亜の豪邸は犯人にとって、あるいはそれ自体で十分に憎しみの対象になり得るのかもしれない(邸宅の内情は分からないけれど、粘着質な犯人の想像だけで憎しみを増幅させてゆく感じなのかも。何となく分かるような気もする・・・いや、いや、いや・笑)。その豪邸まで抵当に入れて作った全財産を、身代金として払ってくれという奥さんの香川京子。「また一からやり直せばいい」という香川京子(キレイ)。それに対して「生まれつき令嬢のおまえには貧乏ということが分かっていない、自分には出来るかもしれないが、おまえには無理だ!」 あの立派な低音で突き放すタタキ上げの苦労人・権藤さん(三船敏郎)。自分にとっては珠玉の名セリフがいくつもありました。


何かの本で読んだのですが、本作の犯人と被害者の関係性が単純に貧乏人とお金持ちという類型化ではなく、貧乏人で苦学生ではあるけれど、医学生でインターン、つまり社会的には将来を約束された若きエリートのはずの犯人と、シューズ・メーカーの重役ではあるけれど、工場の靴職人あがりで(職人さんをバカにしている訳ではありません、念のため)、学歴もコネもなく苦労と努力の末に這い上がって来た被害者との、この単純じゃない対比が、本作に深みを加えているのだという、この見解にはナルホド、ナルホドです。


「マルサの女」(87)で国税局が入るほどの大金持ちを演じた山崎努さんの役名が権藤さん。伊丹十三監督の黒澤さんに対するリスペクトにはユーモアがありますね(ニヤッ)


被害者の権藤さんが、捕まった犯人に向かって一切罵倒しないのは諦めなのか、哀れみなのか・・・。それとも、何か若き日の自分の境遇と同じ匂いを犯人に感じたのか・・・。器がでかい。そして、三船敏郎さん、やっぱりカッコイイ。

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